カフェインは薬?毒?

からだ, こころ, 分子栄養学,

先日、図書館でたまたま見つけて借りた『カフェインの真実―賢く利用するために知っておくべきこと』という本がとても面白かったです。

この本の読みごたえがあるのは、なぜカフェインがポピュラーになったのかという歴史から、デカフェ工場でどのようにカフェインが取り除かれているか、はたまた、合成カフェインがどのように作られているかまで、背景がこと細かに書かれていること。

カフェインというとコーヒーやお茶を連想しますが、コカ・コーラなどの清涼飲料水やエナジードリンクにもたっぷり含まれています。それらに添加するカフェインは、コーヒーやお茶などから抽出されますが、アメリカではそもそも輸入に頼らなければならなかったため、カフェインを合成することを始めたようです。今では、国内ではなく中国などの工場で作られているようですが。ちなみに、日本では食品添加物として使うカフェインは、合成物は使えないことになっているそうです。

私もかつては毎日欠かせないほどのカフェイン好きでした。それが今ではほとんど飲みません。毎日飲んでいると気づきませんが、ごくたまにしか摂取しないと、なるほど、カフェインは単なる嗜好品ではなくて薬効のある薬なんだなと思います。久しぶりにカフェオレを飲むと、心拍数が上がるのです。

カフェインを摂ると、確かに元気が出ます。カフェインは、アデノシンという、疲労を感じさせる物質に構造が似ていて、その受容体にくっつくことで、疲労を感じさせなくなります。

カフェインは実は、電子伝達系という、ATP(アデノシン三リン酸)を作る回路の補酵素としても使われるそうです。このATPは、エネルギーの通貨のようなもの。カフェインを摂ることで、じゃんじゃんエネルギーができるなら、飲んだ方がいいじゃないかと思いますよね?

でも、電子伝達系でATPを作るには、ほかにもビタミンB2やコエンザイムQ10など、多くの補酵素が必要です。なので、カフェインを摂りすぎると、エネルギーができるのはいいけれど、ほかの補酵素を無駄に消費してしまうことになります。補酵素となるビタミンやミネラルは、ほかの代謝経路でも必要とされるので、エネルギーを作ることばかりに使うわけにはいきません。

それに、カフェインはアドレナリンやコルチゾールといったホルモンを副腎から分泌させます。これらのホルモンは肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を上げるので、血糖値が下がってぐったりしてきたときにカフェイン飲料を飲みたくなるのです。でも、やはり、カフェインでアドレナリンやコルチゾールを無駄に分泌させまくっていると、空腹時に使うべきはずのグリコーゲンの蓄えがなくなります。そうすると、やはり血糖値は下がったままなので、甘いもので一気に上げたくなったりしてしまいます。

とまあ、分子栄養学の勉強をしてきて、以上のようなことを知ったことから、カフェインをやめることになったわけですが、今回この本を読んで、ほかにもいろいろ面白いことがわかりました。

カフェインの副作用としては睡眠障害がありますが、個人差も大きいようです。ストレスによる睡眠障害を起こしやすい人の方が、カフェインの影響も受けやすいのだとか。朝にカフェイン200 mgを投与した人の脳波を測ると、就寝時間までその影響が残っていたそうです。確かに、私もカフェインを摂らなくなったら夜9時くらいに眠くなるようになったんですが(さすがに9時には寝ませんが)、日中にカフェインを摂ると、寝る時間まで眠くなりません。アデノシンは眠気を感じさせる作用もあるので、カフェインがその受容体にくっつくことで、眠気を感じにくくなるのでしょう。

あとは、カフェインに弱い人がカフェインを摂ると強い不安感が生じるそうですし、不安障害とカフェインの大量摂取の症状は区別がつかないことから、カフェインの摂りすぎなのに不安障害と診断されてしまうこともあるとか。パニック発作もカフェインによって誘発されやすいようです。パニック発作は低血糖と関連している可能性も言われているので、それも納得です。

ストレスの多い生活を送りながらカフェインを大量に摂っていると、健康な人でも「聞き違い」を起こすことがあるという研究結果もあるそうです。「聞き違い」とか「見間違い」によるミスって、よくあるけれど、睡眠不足だとか疲れているとかのほかに、カフェインによるものもあるかもしれないってことですよね。

そんなわけなので、睡眠が浅い人(日中眠いからカフェインが手放せず、それによって眠りが浅くなるという悪循環に陥りがち)や不安感の強い人は、できるだけカフェインを減らす工夫をしてみましょう。

一気にやめようとすると、頭痛などの離脱症状が出るので、コーヒーから紅茶へと、カフェインの少ないものにしたり、デカフェで割ったりして、段階的に減らしていくのがお勧めです。私はそうやって、数年かかりましたが、今では見事にカフェイン不要になりました。

不安の強い人や睡眠の浅い人は、その解消のためにできることはいろいろあるけれど、まずはやはり、足し算より引き算から。悪影響を及ぼしているものをやめるってことが大切ですよね。