薄井シンシアさんの新刊『人生は、もっと、自分で決めていい』を読みました。

この方については、NHKの『逆転人生』という番組を観て知ったのですが、人柄に惹かれて興味をもってセミナーを受けたことがあって、なかなか衝撃的でした。

シンシアさんは、30歳で専業主婦になり、子育てがひと段落した後、47歳で食堂のおばちゃんから再びキャリアをスタートし、62歳でホテルの社長になった、という人です。フィリピンの華僑の生まれで、日本に留学生として来たくらいだから、進歩的で裕福な家庭に育ったのだろうと思っていたんですが、「女の子に学歴はいらない」という家庭で育ち、国費留学生として来日したことをこの本で初めて知りました。

これだけでもバイタリティのある人だと思いましたが、私がすごいと思うのは、ある程度のキャリアを積んでからでも、失業したときに、経験を積むためにスーパーのレジ打ちのパートをするところとか、社長になっても、服を買うのはユニクロなどで2年に1回くらいだとか、ランチは1000円もしない定食で満足だとか、価値観がはっきりしているところです。

要は、自分にとって何が大切か、自分は何に価値を見出しているのかをわかっている。これって物事を決めるうえでとても重要です。ネットなどを通じて、たくさんの情報が飛び込んでくる昨今では、知らないうちに世間や他人の価値観が擦り込まれてしまっていることってよくあります。

私は元々、あまり人に左右されずに自分のやりたいことをやってきた方だと思いますが、社会性が身に付くにつれ、世間一般と自分を比べて、自分はこれでいいのかと考えてしまうこともありました。たとえば、同世代の平均年収や貯蓄額と比べて不安になったりとか。

でも、考えてみれば、私もグルメにもブランドものにも全然興味がないし、本をゆっくり読めて、月に1,2回、伝統芸能鑑賞や美術鑑賞ができれば満足だったりする安上がりな人間なんです。その代わり、今は勉強するのが楽しくて、それには結構お金をつぎ込んでいる。それが私の価値観。価値観は人それぞれ。

シンシアさんは「ライフワークバランスは一生の中でとればいい」とも言います。ご自身も、仕事は好きだったけれど、両立はできそうもないと考えて、子育てに全力投球することにしたそうです。そして子育てが終わったら今度は仕事に全力投球。私もライフワークバランス悪すぎますが、それでもそれなりに幸せです。世間の言うことに気をとられて、「やっぱりバランスよくした方がいいんじゃないか」なんて考え始めると逆にメンタルバランスを崩しそうになります。

大切なのは、みんなはあーだこーだ言うけれど、自分はこれでいいんだと思えるかどうか。最近「自分軸」という言葉をよく耳にしますが、これは必ずしも「自分の好きなことをする」ということではなく、自分で決めるということなのだと思います。「周りが「自分軸で生きよう」と言っているから自分軸で生きなきゃ」というのは他人軸でしょう。「ねば」とか「しなくちゃ」が出てきたら、おそらく他人軸。「したい」も要注意で、周りの雰囲気にのまれて「そうしたい」「そうなりたい」と思っているだけで、その背後に「しなきゃ」とか「そうならないと自分はダメなんじゃないか」が隠れていることがあります。

その辺をわかっていないと、他人の意見に振り回されて、右往左往することになりがちです。たとえばいわゆるメンターを見つけても、その人の言うことに従っているだけで結局は何も自分で考えて決めていないということになりかねません。

本の中で「選択肢は持っているだけではただのゴミ」という言葉が出てきます。何を選ぶかということは何を棄てるかということ。選択肢に未練があってなかなか棄てられないということも多いんじゃないでしょうか。でも結局、いっぺんにできないことであれば、何かを棄てなければ前に進めないわけです。これも、自分の価値観がはっきりしていないと、できないことですよね。

今年も残すところあと2ヵ月。この本を読んで、来年そしてその先に向けて、いろんなことを見直してみようと思います。