40を過ぎたら鷹のように生まれ変わる

こころ

このところ、夜な夜なアーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』を少しずつ読み返しています。実にン十年ぶりなので、内容はほとんど忘れてしまっていました。ゲド戦記の1巻は、ゲドが一人前の魔法使いを目指して修業する話。ゲドの通り名は「ハイタカ」です。

鷹と言えば、「鷹の選択」という話があります。鷹は寿命が長く、70歳くらいまで生きるけれども、40歳を過ぎるとある選択をしなければならない。くちばしは大きく曲がり、爪は弱くなって獲物が取れず、羽は重たくなって飛べなくなる。そのまま老いて死んでいくか、変化を選ぶか。変化を選んだ鷹は、岩でくちばしを割り、新しく生えたくちばしで爪をはぎ取り、新しく生えた爪で羽をむしり取る。羽が生え変わると、鷹は生まれ変わった姿で残りの30年を空高く飛んで生きていく。だいたい、そんな話です。

これ、だいぶ以前に話題になったそうですが、実は大ウソで実際の鷹は10~15年くらいしか生きないし、そんなことはしないのだそうです。よく自己啓発セミナーで使われる話だとか。

頭が単純な私は、この話を知ったときにはえらく心打たれたのですが、嘘だとわかっても、どちらでもいいような気がするんです。ホントであろうとなかろうと、要は、この話には心打つ何かがあるということ。

40前後の人間はこの話を聞くと身につまされることが多いと思うんですが、実際、老いを目の前にして劇的に変われる人間って少ない。獲物が取れなくなる鷹と違って、人間は年取ったって喰いっぱぐれることはそうそうないし、なんだかんだとのほほんと暮らしていけます。

でも、この喩えを人間に当てはめると何なんだろうかっていうと、白髪を全部抜いたら黒髪が生えてくるわけでもあるまいし(笑)、老いを前にして自らの手で壊すべきものは何かといえば、それはエゴなのかなあと。簡単じゃないですね。でも実は、爪をはぐほどの痛みを伴うのかもしれません。

そういえば、『ゲド戦記』のゲドも、早熟で傲慢だったために、事件を起こして生死の境をさまよいます。そのときに自ら放った影を探す旅に出るのです。

『ゲド戦記』 、映画は原作とはだいぶ違うけれど、挿入歌は秀逸。