牧野富太郎のホロスコープ

占星術, , 植物

最近、牧野富太郎の生涯を小説にした『ボタニカ』を読みました。作者の朝井まかてさんは、北斎の娘である葛飾応為を主人公にした『眩(くらら)』が良かったので、『ボタニカ』の広告を見て、すぐに注文。

牧野富太郎は、「日本の植物学の父」と呼ばれる人で、幕末の土佐に生まれた植物学者です。知る人ぞ知る、という人物ですが、なんと、来春の朝ドラは、牧野富太郎をモデルにした話だそうなので、広く知られることになりますね。

以前にテレビで、8Kカメラで撮った植物の映像と、牧野が描いた植物画を比べる番組をやっていたのですが、驚くほど正確に植物が描かれていました。

その生涯はなんとなく知っていたのですが、今回小説を読んで、その人物的が魅力で興味が湧き、ホロスコープを作ってみました。

出生時間はわからないので、仮に昼の12時で作ってあります。なので、ハウスは使えませんが、月の位置は時間が変わったとしても魚座に入ることは間違いないでしょう。

太陽、水星、天王星が双子座に入っているのが目につきます。牧野はほとんど独学で植物について学んでいますが、小学校を中退しています。頭が良すぎて、すでに知っていることを学ぶのはバカバカしいということだったようですが、15歳くらいで、人手不足のために小学校の臨時教員を頼まれているので(今じゃ考えられない)、よっぽど頭が良かったのでしょう。双子座が強調されているのも納得。

しかも、水星と天王星はコンジャンクション。とても新しいもの好きで、顕微鏡や印刷機、はたまたオルガンなんかも買っています。コーヒー好きだったようで、コーヒーミルも。オルガン買うほど西洋音楽にも詳しく、若い時は自由党に入っていたこともあるそうなので、植物一筋というわけではなく、双子座らしく、幅広くいろんなことに興味を持っていたのでしょう。

水星は金星とセクスタイル。誰に絵を学んだわけでもないのに、精緻な植物画が描けてしまうというのも、生まれもった才能ですね。

水星と天王星のコンジャンクションは、乙女座の木星・土星のコンジャンクションとスクエアです。牧野は、熱心に研究を進めながら、大学の研究者とも連絡を取り、帝大の研究室への出入りも認められています。最終的には、学位を取得するのですが、水星・天王星の常識にとらわれないものの考え方をする牧野は、そもそも学歴や権威に興味はまったくなく、そうしたものは研究していくうえでは何ら関係ないと考えていたので、周りの説得があってのことだったようです。その間にも、アカデミックな世界や権威(木星・土星)とはそりが合わず、出入り禁止になったこともありました。

木星・土星の真向かいには月がいて、出生時間によっては多少ずれますが、オーブはあってもほぼオポジションと考えていいんじゃないでしょうか。水星・天王星とでTスクエアになります。

牧野の両親は早くに亡くなっていて、血のつながらない祖母(祖父の後妻)に育てられましたが、勉強に必要な書物など、好きなだけ買ってもらえたようです。それと、この小説で初めて知ったのは、若い時に従妹と結婚していたということ。牧野は造り酒屋の経営はこの従妹に任せて、単身東京に出て研究に打ち込んだのですが、そのためのお金は工面して送ってもらっていたようだし、一回り年下のスエと暮らし始めて子どもができても、この従妹は律儀に子供服なども送ってくれていたようです。結局は離婚してスエと正式に一緒になり、このスエも牧野を「牧ちゃん」と呼んで、尽くしてくれたのだそう。スエは、生活のために、一時期「待合茶屋」(芸者が上がるお座敷)を経営していて、すでに牧野は帝大で教員をやっていたので問題になったそうですが、本人は常識にはまったくとらわれないので一向に気にしていなかったというのは、水星・天王星コンジャンクションっぽいですね。

育ての母である祖母、最初の妻である従妹、そして愛妻のスエは、ものすごく寛容でしたが、見方を変えれば甘やかしてもいたということなんでしょうね。それを月と木星のオポジションが表しているのかなと。魚座の月というのは、「妻の無私の奉仕」かもしれませんね。 研究のために散財しすぎて、借金だらけで家賃も払えず、夜逃げも何度もしたそうです。それでも、文句も言わずに生活を支えてきたのですから。月と木星のオポジションは、学問のために家庭生活が回らなくなる、というようにも読めます。

太陽と火星のスクエアも目立ちますが、これは何でしょうかね。特に怒りっぽかったというような印象は受けないんですが、海王星の火星なので、怒りを抑圧していたのかもしれませんね。大学では長いこと、安月給で昇給もなくこき使われていたみたいですし。

牧野はこだわりが強かったらしく、標本や植物図鑑の作成も納得いくまでかなり時間をかけたようです。雑誌や図鑑を出す際には、印刷機を自ら買って、印刷所に印刷技術を学びに行っているほど。

そうなると、こだわりや探求心を表す冥王星と水星のからみはないのかなと思うんですが、ハーフサムでありました。太陽が水星と冥王星のハーフサムで、研究者らしいですね。冥王星は水星と海王星のハーフサムなので、没頭しすぎて神経を病みそうな感じもありますが、水星に天王星がくっついているからでしょうか、どこか楽観的なんですよね。木星の楽観性とは違う、行き当たりばったり的な。

その天王星のせいか、書斎にこもって研究するというよりは、一所に落ち着かず、採集や講演のために全国を飛び回っていたようです。太陽も月も柔軟星座で、柔軟星座がめちゃくちゃ多いです。よく言えば、フットワークが軽い。よくしゃべる人だったようだし。

ちなみに、小説にもチラリと出てきた博物学者の南方熊楠は、水星と冥王星のコンジャンクションをもっています。二人とも奇人変人ぶりは有名。結局二人は顔を合わせることはなかったようですが。

牧野は、最終的には時間をかけて(土星)目標(木星)を達成するわけですから、水星・天王星と木星・土星のスクエアを克服したことになります。学界との軋轢があっても屈せずに、自らの天才性(水星・天王星)を活かしたわけなので、ハードアスペクトは「悪い」と単純に片づけられるものではないのだということがよくわかります。試練はあっても乗り越えれば、ハードアスペクトは活かせる。

さて、太陽星座が双子座というのはわかりやすいですが、心理占星術で欲求を表す月が魚座というのはどういうことなんでしょう。牧野が70歳を過ぎて書いた「植物と心中する男」という手記にこんな文章がありました。

「私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じます。あるいは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。」

草木の精…これですね(何とも可愛いおじいちゃん!)。貧乏してまで続けた植物の研究は、名誉や地位のためではなく、純粋に「植物界への無私の奉仕」という欲求からきているのであって、それを双子座の太陽が表すように、知性でもってやっていたんですね。この植物愛には脱帽。