天王星と水星のアスペクト~常識を疑う知性

占星術

天王星と水星のアスペクトは天才性を示すと言われることがあります。水星は知性を表し、天王星は革新性や斬新さを表します。また、天王星は水星を1オクターブ高くしたもの、と表現されることもあります。水星の知性は天王星と共鳴し合うことで、一段上がった高みから考えられるようになるのかもしれません。

では実際にこのアスペクトをもっている人が天才性を発揮できているかというと、そうでもないような気がします。人とは違う考えというのは、周囲から受け入れられないことがほとんどです。特に「和を以て貴しとなす」日本では、和を乱しかねない異質な考えは排除されがちです。このアスペクトのある人で、天才性を発揮するどころか、逆に自分は周りとずれていないかと常に気にしているような人を何人か見てきました。

天才といえば、まず思い浮かぶのがアインシュタイン。だいぶ前にナショナルジオグラフィックチャンネルで放送していた『ジーニアス アインシュタイン』というドラマをやっていて、その録画を最近ようやく観始めたのですが、アインシュタインもその天才性を最初から周囲に受け入れられたわけではなかったようです。少年時代のアインシュタインの「僕の意見はいつも歓迎されない」というセリフが印象的でした。

ホロスコープを見てみると、水星と天王星はクインデチレ(165度)。心理占星術で「こだわり」を示すアスペクトです。水星は土星とコンジャンクションなので、自分の斬新な考えを時間をかけてでも形にしたいというこだわりとも見ることができます。実際、数学と物理の才能はずば抜けていても、文系科目がからきしダメだったらしく、大学入学もすんなりいかなかったようです。ドラマの中では、父親はアインシュタインをエンジニアの道に進めさせたがりましたが、本人はそれには従わず、大学で教鞭に立つことを目指しました。水星・土星と天王星のクインデチレからは、父親への反抗心や権威への挑戦といった葛藤やこだわりも見て取れます。ちなみに、アインシュタインには発達障害があったのではないかとも言われています。5歳ごろまであまり言葉を発しなかったかと思えば、9歳の時に自力でピタゴラスの定理を証明したことや、才能の凸凹の激しさからすると、その可能性は高いでしょうね。

さて、ほかに最近、この人は天才だなとつくづく思ったのは、池田晶子さん。だいぶ前に46歳の若さで亡くなられましたが、わかりやすい平易な言葉で哲学エッセイを書いていた方です。昔よく読んでいたのですが、最近になって急にまた読みたくなって改めて読んでみたところ、やっぱり天才だなと。「私が私である」「生きている」という当たり前のこと、その当たり前のことの不思議さを延々と考え、言葉にし続けた人です。たぶん、誰でも子どもの頃はそうしたことを多少なりとも考えたことがあるのではないでしょうか。私が池田さんの『帰ってきたソクラテス』を初めて読んだのは、確かまだ20代前半だったかと思いますが、あ、私と同じことを考えている人がいた、と思って、孤独感が薄れたのを覚えています。でも、悲しいかな、社会に揉まれているうちに、そんなことを考えることは減ってしまい、30年近く経った今読んでみて、ガツンとやられた気分でした。

池田晶子さんのホロスコープでは、獅子座の水星と天王星がコンジャンクション。子どものような純粋な知性で当たり前のことを疑い続けたことを表しています。それに対して木星がトライン。考え続けたことを哲学エッセイという形で残しています。

天王星は土星より遠くにある星。天王星の革新性とは、土星が表す常識を超えること。天王星と水星の組み合わせというのは、常識を超えるためにまずそれを疑う知性なのですよね。

14歳からの哲学』という本の中に、次のような一節があります。不思議だと思ったことを周りの大人に言うと、「そんなの当たり前でしょ」という答えが返ってくる。そういうことを経験しがちな子どもに向けた文章です。

「そんなことが続けば、何か自分の方が変なのじゃないか、こんなこと感じるのはいけないことなんじゃないかと思って、その不思議の感じを忘れようと努めるかもしれない。でも、絶対に忘れちゃだめだ。なぜって、その不思議の感じこそが、君がこれから、君の人生にとって最も大事なこと。誰にも正しい本当のことを知るために考える、その最初の最初の鍵穴だからだ。不思議の扉は、これからいくつもいくつも、宇宙の果てまで開いてゆくことができるものなんだ。」

14歳でも読めるような平易な文章で書かれていますが、年をとればとるほど、ハッとさせられる本です。池田さんも、「私が私である」という当たり前のことの不思議さを周りにわかってもらえなかったそうですが、それでも考え続けた。水星と天王星の天才性を発揮するには、周囲に何と言われても、それを追求する純粋さと覚悟が必要なのかもしれませんね。