癒えるとは進化すること
ここのところ読んでいた『Evolutionary Herbalism』をやっと読み終わりました。なんせ、500ページ近くもあるのだから、ずいぶん時間がかかりました。内容はというと、ハーブの本ですが、一言で表せないほどとにかく幅広い。植物そのものをホリスティックに、ボディ・マインド・スピリットに分けて捉える観点も私には新しかったけれど、四元素論だけじゃなく、アーユルヴェーダや中医学、医療占星術からタロットやカバラ、錬金術まで、すべてを関連付けて体系化しているのは驚きでした。
スパジリック(spagyric、スパギリーク)というものを知ったのも初めて。通常、ハーブを扱うときには、蒸留して精油やアロマウォーターを抽出したり、水や油で成分を抽出したりして、残ったハーブそのものは捨ててしまいますが、それをさらに水につけて発酵させます。その出がらしを今度は乾燥させ、焼いたりすりつぶしたりして灰にするのです。それを水に溶かして、水溶性の成分を分離させます。水溶性の成分を溶かした水を今度は蒸発させ、結晶を取り出します。
錬金術では、硫黄、水銀、塩という3つの要素が使われます。ここでは、蒸留して得られたものが硫黄、発酵過程で得られたものが水銀、最後に得られた結晶が塩にあたり、最後にそれらを全部混ぜ合わせたものがスパジリックです。ハーブそのものをそのまま食べるのとは違い、それぞれの過程で不純物を取り除いた後に再び混ぜ合わされたものは、そのハーブの純粋なエッセンスが詰まっていて、人間をホリスティックに癒す強い力をもつそうです。これぞ錬金術。スパジリックについては、しっかり読み直して、そのうちまた書こうと思います。
印象に残ったのは、「癒えるとは進化すること」「進化なくして癒えるということはあり得ない」ということ。つまり、「癒える」というのは元に戻ることではなく、癒えたときには、元の自分とは別の、進化した(成長した)自分になっているわけです。「癒される」という言葉が気軽に使われるようになった昨今ですが、本当に癒されるというのは、そういうことなんですね。
著者の博識と深い植物愛に脱帽したくなる一冊でした。
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