発達障害ってレッテル?楽に生きるための指標?

発達障害


最近はテレビでも発達障害について取り上げられることが多くなったので、発達障害という言葉を耳にしたことのある方は少なくないと思います。

実は私ももう十数年前に、発達障害であるアスペルガー症候群の診断を受けています。うつ病などで診察を受けて発達障害であることが明らかになる場合も多くありますが、私の場合は、新聞でたまたまアスペルガーについての記事を読んで、直観的に「私はこれに違いない!」と思って自ら診断を求めて受診しました。

詳しい経緯は長くなるので省きますが(ご興味のある方はこちら)、最初のクリニックでは、初診時に思いっきり否定されたのに、検査結果を聞きに行ったときには、結果をひた隠しにされました。「社会に適応している人に発達障害のレッテルを貼りたくない」という理由からのようです。

それで、次に行った成人発達障害専門のクリニックでは、ご自身が発達障害がある先生だったので、 「ご自分の特性を知って、より良く生きていきたいってことですよね」と言ってくれたので話が早く、各種検査の結果、アスペルガー症候群という診断名(現在では自閉スペクトラム症)がつきました。「全然診断に迷わなかった」と言われるほど、私の検査結果にはアスペルガー特有の傾向が顕著にみられたそうです。

診断を受けたことで人生の謎が解け、数々の問題が必ずしも自分の努力不足ではないことがわかって、少しは楽になりました。とはいえ、薬物療法を要するような二次障害があったわけではなく、発達障害の診断を受けたことを話しても誰にもまともに聞いてもらえません。現在はその先生は、社会に適応している場合は発達障害の診断は下していないようですし、ご自身も発達障害だとは言っていないようです。

そんなわけで、次第に診断を受けたことは誰にも話さなくなり、診断を受けたことに意味があったのかどうかさえわからなくなりました。

そんなあるとき、吉濱ツトムさんという人の『アスペルガーとして楽しく生きる』という本をたまたま手にしたところ、低血糖と栄養不良について書かれていました。私は低血糖については自覚があったものの(手が震えるほどだったので)、低血糖にならないためにはとにかく血糖値の上がるものを食べなければいけないと勘違いしていたのです。実は、血糖値が急激に上がるもの(糖質)を食べるとインスリンが大量に分泌されて、逆に急激に下がるのだそうです。『発達障害の治療の試み』という本でも発達障害者には血糖調節異常がよくみられると書いてあります。

それで自分なりに糖質制限とサプリメント摂取を試してみたところ、劇的に状態が改善しました。頭のもやは晴れるし、今まで騙されていたのではないかと思うほど。体力もなかったのが、40も半ばを過ぎて人生の中でいちばん体調がよくなり、頭も働くようになったので、仕事もはかどって収入も増えたのです。こんなことなら、もっと早く知りたかった!

糖質制限やサプリメント摂取は加減が難しいので、その後、基礎医学やオーソモレキュラー療法を勉強するようになって、身体の大切さがますますよくわかるようになりました。

私は痩せていて、どちらかというと太りたいほう(っていうと「嫌味~」なんて言われることがあるけれど、ガリガリなのも嫌なものなのよ)なので、発達障害という枠組みがなければ、糖質制限なんて一生試さなかったんじゃないかと思います。なにしろ、糖質大好きでしたから。7、8年菜食をやっていて、もう、糖質ばかり食べていました。今思えば栄養ナシ。過去の健康診断の血液検査のデータを見てみると、いかにタンパク質が足りていなかったかがわかりました。

それで思ったのです。発達障害の診断は無駄じゃなかったって。だって改善できるんですから。

確かに、「障害」という言葉を衝撃的に感じる人も多いのだと思います。私の場合は、身体障害者の介護をしていた経験があることから、すんなりと受け入れられました。だって、障害者の人たちって、大変なことはあるけれど、それ以外はごく普通の人間ですから。別に劣っているわけでもなんでもない。

そうは思っていても、声高に自分に発達障害があることを話すには勇気がいります。やれパラリンピックだのアールブリュットだのとは言っていても、自分の身近な人間から障害があると告白されるのはぎょっとすることのようです。特に、脳と生殖器の問題って、大きな声では言えない雰囲気があります。実際のところ、診断を受けてからずいぶん経ち、自分の限界は認識しているので、それに応じて予定を調整(特に人づきあい)しているし、自営業なので特に誰かに配慮してもらう必要もありません。だから、特に今はそれほど切羽詰まって困っていることもないので、ほとんど口にすることはないのですが。

「発達障害なんて、ただの個性でいいんじゃないの」と思う人は多いと思います。でも、改善する方法があるのであれば、ただの個性で片づけることは人生をよりよく生きるチャンスを奪うことにもなりかねません。診断がつかないグレーゾーンの人たちだって、身体も含めて自分の特性を知ることで、もっと楽になれるのです。

Naad(ナード)では、グレーゾーンも含め、発達障害のご相談についても、私で答えられることであればお受けしています。誰にも相談できずに悩んでいる方は、拙訳書の『壮年期のアスペルガー症候群』もご参照くださいね。