スピリチュアルバイパスとは
スピリチュアルバイパスという言葉を知ったのはわりと最近のことです。
英語ではSpiritual bypassingとも言いますが、「未解決の感情面の問題、心理的な傷、未完成の発達課題などに直面するのを避けるために、スピリチュアルな考えを用いたり、スピリチュアルな教えを遵守する傾向」のことです。
心理療法家ジョン・ウェルウッドの造語なので、心理面の問題を避ける傾向という意味に使われるようですが、心理面だけではなく、身体的・物質的な面についても、スピリチュアルバイパスは起こるのではないかと思います。
スピリチュアルに傾倒している人は、心理面では怒りなどのネガティブな感情を抱くことは悪いことだとみなし、「ポジティブ」な感情だけを重視することがよくあります。結果として、ネガティブな感情は抑圧されたままになり、その根っこは未解決になるため、何かの拍子に一気に表面に噴き出すこともあります。
身体的・物質的な面では、身体の調子が悪くなっても、最初からその原因をスピリチュアル的な問題として捉えてしまうため、実際に肉体に問題があってもそれに気づきにくくなります。また、精神面だけを重視して、お金は汚いもの、お金を稼ぐのはよくないことと考えてしまうと、生活が困窮したり、いつまでたっても自立できないことになります。
実は私も、そうしたスピリチュアルバイパスをしていた時期がありました。20代のころにスピリチュアルに興味をもち(まだ「精神世界」や「ニューエイジ」と呼ばれていた時代です)、定職にもつかずに瞑想にどっぷりはまっていた時期もありました。ベジタリアンだった時期も長かったのですが、結果として、身体面も情緒面も不調が続いていたのですが、それもみなスピリチュアル的な視点からしか見ていなかったので、なかなか解決しなかったのです。そのおかしさに気づき、心理面や身体面にも取り組むようになり、手に職をつけて社会の中で自立して生きられるようになって、ようやく心身ともに安定しました。
占星術ではスピリチュアルは海王星と結び付けられます。海王星は良くも悪くも境界をなくします。スピリチュアルでは「ワンネス」ということがよく言われますし、「エゴをなくす」ことが大切だとみなされます。けれども、心理学ではエゴ(自我)は必ずしも悪い意味では使われません。自我の形成は必要なことですし、エゴをなくすと言っても、そもそも自我がきちんと出来上がっていなければ、なくしようもないのです。カルトなどのヘンなスピリチュアルに引っかかりやすい人は、自我が弱いために他人との境界が曖昧で、他人から教え込まれたことを無批判に信じ込んでしまいやすいと言えます。
また、海王星は引きこもりという形で現れることもあります。海王星を健全なスピリチュアリティという形で使えるかどうかは、自我(太陽)が健全に育っているか次第なのかもしれません。
かく言う私は、現在、出生図のアセンダントにソーラーアークの海王星がのっていて、出生図の金星・冥王星の真向かいにトランジットの海王星がやってきています。そしてもうすぐ、出生図の海王星にソーラーアークの天王星がのっかってきます。今日は年に1度のソーラーリターンなのですが、今年のソーラーリターン図で太陽は12ハウス(海王星がナチュラルルーラー)に入っています。
少し前から、しばらくご無沙汰していたスピリチュアルに対する興味がまた強くなってきているんですが、以前とは視点が違う感じ。ぐるっと螺旋階段を一回りして、新たなスタート地点に立ったみたいです。ちょうどカイロンリターンの今。カイロンは土星と天王星をつなぐ星。土星の現実をきちんと踏まえられるようになってようやく、その先のトランスパーソナルなトランスサタニアン(天王星・海王星・冥王星)の世界にまともに足を踏み入れられるのかなと。この海王星づくしの星回りを存分に活用したいと思っている今日この頃です。
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